ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #24 「ダイヤモンド・パニック」

こんばんは、松田悠士郎です。

 

今回のテキストは、「探偵物語」第24話「ダイヤモンド・パニック」です。脚本は宮田雪さんと大和屋竺さんの共同、監督は小澤啓一さんです。「松田優作DVDマガジンVol.12」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。また、参考文献として「松田優作と七人の作家たち」(李建志著)を参照しています。

 

当たり屋行為を行っている関東桜会の連中に因縁をつけられた工藤、その場は逃げたものの、名刺を渡してしまった為に組事務所へ拉致されてしまう。だがそこでは、当たり屋をやった4人の内3人がボコボコにされていた。その近くには組長の真崎と情婦のかつ江が居た。当たり屋4人の残りひとりは代貸の小室で、工藤に事情を説明する。

1週間前、桜会のチンピラが関西のチンジケートのトップの飼い猫を車で轢き殺してしまった。桜会はチンジケートとの手打ちの為に、故買屋の山崎から時価1000万円相当のダイヤモンドを100万円で手に入れたのだが、そのダイヤモンドが組事務所の金庫から消えたと言うのだ。真崎は工藤に20万円と匕首を見せて、仕事を受けるか指を詰めるかの2択を迫る。当然、工藤は20万円を取った。その場にはチンジケートの人間がふたり来ていたが、そのひとりは工藤に「俺の顔は見なかった事にした方がいいな」と言い残して立ち去った。

金庫のある組長の部屋に場所を移して更に話を聞くと、ダイヤモンドはモンチッチの中に入れて金庫に保管したと言う。その事を知っていて、尚且つ金庫を開けられるのは真崎、小室、ボコボコにされた3人(矢吹、瀬戸川、阿久津)の5人。また、前夜は金庫前に見張りをふたりつけていたのだが、午前1時から3時の間に、ふたりは揃って居眠りをしていたらしい。その見張りの片割れが、何とイレズミ者だった。イレズミ者は工藤が知らない間に桜会の盃を受けていたと言う。手打ちのタイムリミットは今日の午後5時。

まず工藤は、最も疑われている3人のアリバイを確認し始めた。矢吹は当該時間に真崎の情婦であるかつ江とホテルに居て、瀬戸川は私立幼稚園の入園願書受付の為にひと晩中並んでいた。残る阿久津は徹マンしていたと言うが、雀荘の店主によれば、阿久津と卓を囲んでいた3人はいずれも警察に捕まってしまったらしい。そこで工藤は、イレズミ者と共に見張りをしていた髭面の男を留置場に潜り込ませてアリバイ証言を得る事に成功する。

全員のアリバイが成立してしまい、困った工藤は3人を連れて山崎の所へ行く。モンチッチの中にダイヤモンドを入れたのは山崎も見ていた。そモンチッチは、車のフロントガラスに小室が貼り付けたと言う。そこから、工藤達は当日の行動を再現した。小室が居た助手席に工藤が座り、3人に聴取すると、3人が当たり屋行為で工藤に因縁をつけた際、小室だけは車内に残っていた事を思い出す。つまり、モンチッチをすり替える事が小室には出来た訳だ。犯人を小室だと確信した工藤達は急いで桜会の事務所へ向かうが、居合わせたイレズミ者によれば、小室はつい先程出かけたらしい。慌てて追いかけ、見つけた小室と銃撃戦になるが、橋の下にぶら下がって隠れていた小室がイレズミ者に見つかった時に、咄嗟にダイヤモンドを飲み込んでしまう。すると急に苦しみ出し、川へ落下してしまう。悪い事にそこへ服部&松本コンビが来てしまう。工藤達は何とかその場をごまかして小室を川から引き上げてもらうが、既に小室は絶命、死体は警察に持って行かれてしまった。

工藤はイレズミ者と共に真崎の邸宅へ赴き、事情を説明して解雇を要求したが、真崎は工藤に死体をかっぱらって来いと命ずる。仕方なく、工藤とイレズミ者は城西警察病院の霊安室から小室の死体を盗み出すが、警察に追われる羽目に陥る。途中で霊柩車に乗り換えて尚も逃走、保険会社の駐車場に逃げ込んで真崎邸に電話すると、既に警察が張り込んでいると言う。真崎は自分から死体を取りに出向く為に、陽動作戦で警察の目を引きつけている間に裏口から車で出た。それを、チンジケートのふたりが追う。「そろそろタイムリミットだ」

工藤達が指定した空き地で待っていると、真崎達がやって来た。だが、小室の死体を前に全員ビビってしまって腹の中のダイヤモンドを取り出せない。「だらしないヤクザだねぇ」呆れ返った工藤は、イレズミ者と共にその場を後にする。入れ替わりに現れたチンジケートのふたりが、午後5時になったのを確認してから、真崎達をフルオート射撃を浴びせた。

後に、山崎が例のダイヤモンドはいわくつきで、手にした者はロクな死に方をしないと暴露した。

 

以上が、今回のストーリーです。

今回も、大分テイストが変わっています。

工藤の優しさという点では、ダイヤモンドを盗んだと疑われた3人のアリバイ探しの為に偽の事件通報までして尽力した所でしょうか。しかし、彼等がチンジケートのふたりに射殺されている所は完全に無視しているので、実はそれ程感情移入していなかった様です。

この様に、ハートボイルド味は薄めですが、小ネタやギャグは満載なので楽しめます。では、今日はこれにて失敬。