ハーフボイルドはハートボイルドの夢を見るか? 最終回「Eにさよなら/この街に正義の花束を」
こんばんは、松田悠士郎です。この企画もいよいよラスト、「仮面ライダーW」最終回「Eにさよなら/この街に正義の花束を」を取り上げます。
サンタちゃんが店長を務めるペットショップで、翔太郎は店員とペットフードの事で揉める。サンタちゃんに取りなされて店を出る翔太郎を、少年が観察していた。
フィリップが消えてから一年が経ち、破壊された風都タワーも再建されていた。
翔太郎達に助けられた後、病院に引き取られてから眠り続けていた若菜は、目覚めたものの周囲に心を開こうとはせず、見舞いに訪れた翔太郎にも「命の恩人のつもり? それたも来人の差し金?」と素っ気ない。フィリップから消滅について口止めされている翔太郎は、もどかしい気持ちで若菜を見つめるのみだった。若菜を救い切れていない事に責任を感じる翔太郎、そんな彼を上空から見つめる、何か。
自分を尾行していた少年に気づいていた翔太郎は、彼を事務所に入れる。少年の名は青山晶、小学6年生。依頼は、3日前から行方不明の姉・唯の捜索。姉が居ないと何もできないと胸を張って言う晶に、ハードボイルド気取りで説教する翔太郎だが、晶はしたり顔でハードボイルドを否定する。頭に来たのか、翔太郎は晶を外へ連れ出して調査に付き合わせた。
クイーン&エリザベス曰く、唯が通う嵐が丘高校は「EXE」という悪いグループと関わりがあるらしい。ウォッチャマンによれば、EXEはガイアメモリを売買する若者のグループで、ボスは「エナジー」と呼ばれているそうだ。エナジーがメモリの名前だと察した翔太郎は、いつもの癖でフィリップに電話をかけようとするが、エリザベスに突っ込まれて我に返る。
翔太郎と晶は、EXEが溜まり場にしている廃工場を訪れた。するとメンバーらしき若い男が現れる。翔太郎が「お仕置きだ」と呟いて近づこうとすると、別の男が唯を拘束して連れて来た。
「お仕置きするならコイツからだろ?」
彼等、最初にメモリの売買を始めたのは唯だと言った。晶は否定するが、唯は認めて晶に謝る。男達は「偉大なカリスマ」と呼ぶリーダーの存在を示唆しながら、自分達を「ミュージアムを継ぐ者」と称した。そのカリスマを迎える為に、彼等は残りのメモリをかき集めると宣言した。
唯を連れて来た男が、アノマロカリス・ドーパントに変身した。翔太郎は晶を隠れさせてロストドライバーを装着、仮面ライダージョーカーに変身してアノマロカリスを迎え撃つ。マキシマムドライブを発動、ライダーパンチでアノマロカリスを倒す。だがそれを見ていた晶は全てに背を向けて逃げようとする。翔太郎が追いかけて捕まえると、晶は「僕は貴方ほど強くない」と拒絶する。翔太郎は、穏やかな顔で晶に告げる。
「俺だって強くなんかねぇ、無理矢理踏ん張ってるだけだ」
晶を先に事務所に帰し、翔太郎は何処かへ行った。
風都署に現れた若菜は、署内で変身せずにドーパントの能力を使って見せた。照井も、駆けつけた翔太郎もその力に驚く。
屋上へ逃げた若菜を追った照井は、再起動とガイアインパクトを望む若菜に対してアクセルに変身して襲いかかる。だが、寸前で翔太郎が若菜を庇う。ここで翔太郎が口を滑らせ、既にフィリップが消滅している事を若菜に知られてしまう。ショックを受けた若菜は、姿を消した。
事務所に戻った翔太郎の耳に、フィリップの声が飛び込んだ。喜び勇んで中に入る翔太郎だが、そこには亜樹子と晶しか居ない。実は亜樹子がフロッグポッドにフィリップの声が残っているのを見つけて再生していたのだ。翔太郎は意気消沈し、亜樹子の謝罪も耳に入らぬままリボルギャリーへ入ってしまう。そんな翔太郎を「相棒が居なくなってメソメソしてる」と嘲笑う晶に、亜樹子が真実を告げる。驚く晶の携帯電話に、EXEからのメールが入る。
若菜はシュラウドに会って、再起動とガイアインパクトにたいて尋ねる。シュラウドは「答えは地球の本棚にある」と教える。素直に答えたシュラウドに疑念を抱く若菜に対してシュラウドは言った。
「だって、家族ですもの」
若菜にもたれかかる様に、シュラウドは息を引き取った。
EXEのアジトに来た晶は、虚勢を張るがあえなくメンバーに捕まる。残りのメモリの在処を訊かれた唯は、晶が持つバッグの縫い目をひきさき、中から「オーシャン」メモリを取り出してメンバーに渡す。メンバーが歓喜する間に、結は晶を連れて逃走を試みるがすぐに取り囲まれてしまう。バッグを振り回して応戦する晶だが、多勢に無勢だ。するとそこへ、ハードボイルダーに乗った翔太郎が登場、コックローチ・ドーパントに変身したメンバーを蹴散らす。翔太郎が来た事を不思議がる晶に、亜樹子が靴を指差してみせた。念の為にと、晶の靴に発信器を付けていたのだ。ひとりで踏ん張った晶を讃えた翔太郎は、ジョーカーに変身してコックローチを倒す。後から現れた照井と共に、他のメンバーの変身を阻止した。
若菜は、地球の本棚に入って閲覧を始めた。
無事に救出した晶と唯を伴って歩く亜樹子と翔太郎。その前に以前翔太郎と揉めたペットショップの店員が立ちはだかった。店員は「エナジー」メモリを取り出す。この店員こそEXEの真のリーダーだった。翔太郎達の目の前で、店員はエナジー・ドーパントに変身した。晶達を逃がす翔太郎の背中にエナジーの一撃が命中、翔太郎は地に倒れ伏した。
閲覧を完了して目を開けた若菜。その前には、再建途中の風都タワーがあった。
死んだ、と思われた翔太郎が目を開けた。その背中に、エクストリームメモリが貼り付いていた。翔太郎から離れたエクストリームメモリから、フィリップが姿を現した。
若菜は、自分の身体をフィリップに与えたのだ。
人類の未来の為に地球を変えるという園咲の使命を、若菜は誰よりも優しいフィリップに託したのだ。
若菜を迎えに来る様に現れた琉兵衛、シュラウド、冴子。フィリップが駆け寄ろうとするが、琉兵衛とシュラウドに止められる。
「私達は地球に選ばれた家族だからね、この星の中からお前を見守っているよ」
琉兵衛のこの言葉を最後に、若菜達はフィリップの前から消えた。
フィリップはおよそ一年かけて身体を復元しながら、翔太郎を見守っていたのだった。
ハーフボイルド丸出しで喜ぶ翔太郎に、それを揶揄する亜樹子。以前の鳴海探偵事務所の光景が戻った。フィリップは、既に検索を済ませた晶の事を褒め讃える。すると、すっかり蚊帳の外に置かれたエナジーが怒り狂い、再び変身した。翔太郎とフィリップは久々にダブルドライバーを装着した。
「サイクロン! ジョーカー!」
Wがエナジーを様々なスタイルで圧倒、最後はジョーカーエクストリームでメモリブレイクを果たした。
以上が今回のストーリーです。
ふたりでひとりの仮面ライダーの物語、遂に最終回を迎えました。
フィリップを失った翔太郎は、寂しさと孤独を押し殺しながら探偵と仮面ライダーを続けていた。姉に甘えっ放しの晶にハードボイルドを気取って説教するものの、フィリップの声を聴いて動揺したり、若菜の力によって復活したフィリップとの再会に大声を上げて歓喜したりと、相変わらずのハーフボイルドっぷりを見せています。
しかし、フィリップに託された若菜の事を常に気にかけ、身を挺してアクセルの攻撃から守ってみせる所からは、翔太郎持ち前の優しさがよく見えました。翔太郎は、未だ未完成ながらも充分に「ハートボイルド」を体現していると言えるのではないでしょうか?
余談ですが、最終回のサブタイトルの後半部分は「傷だらけの天使」の、冒頭に主人公と揉めた人物が最後に主人公を襲う展開は「探偵物語」最終回「ダウンタウン・ブルース」のそれぞれオマージュだと個人的に思っています。
さて、当初の想定よりもかなり長い期間になってしまいましたが、「仮面ライダーW」のハートボイルド的考察は、以上をもって終了です。読んでくださった方々、ありがとうございました。「W」の物語は、正当続編漫画「風都探偵」(アニメ化も決まりました)に続きますが、このブログは今回でピリオドです。ではこれにて失敬。