ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

ハーフボイルドはハートボイルドの夢を見るか? #47「残されたU/フィリップからの依頼」

若菜の声を聴いて目を覚ましたフィリップの前に、姿を消していたミックがいた。翔太郎が見つけ出したのだ。喜んでミックを抱いたフィリップの右手が一瞬、消えかかる。慌てて右手を隠したフィリップが、翔太郎に若菜を探し出して欲しいと頼んだ。翔太郎ほ引き受けるが、その時フィリップが意味深な言葉を吐く。

「どんな辛い事が待っていてもかい?」

 

『CHARMING RAVEN』という企業の製薬工場、内部はガイアメモリ製造工場に改装されつつあった。

「財団X」局長ネオン・ウルスランドは加頭に、ミュージアムを投資対象から外すと告げるが、加頭はガイアインパクトは継続できると反論する。その根拠となる切り札こそ若菜だった。

翔太郎は若菜捜索の端緒として、冴子の行方を探した。ウォッチャマンからここ数日サーキットで走っているという情報を得て、照井、フィリップ、亜樹子と共にサーキットへ赴く。

コース上でフィリップが冴子に若菜の行方を尋ねるが、冴子も当然知らない。そこへ加頭が現れて冴子に告げる。

「貴方を迎えに来ました」

反発する冴子の前で、加頭は園咲家の人間しか扱えない筈のゴールドメモリを取り出す。加頭曰く、適合率98%らしい。そのメモリ=ユートピアを発動した瞬間、加頭以外の全員の身体が宙に浮き、吹き飛ばされた。照井がアクセルに変身して立ち向かうが、エンジンブレードがユートピアドーパントの身体に全く届かない。翔太郎はフィリップに変身を促すがフィリップは若菜救出まで取っておかなければならないと拒否する。次にWに変身したら、フィリップの身体は消滅してしまうと言うのだ。翔太郎と亜樹子が動揺する間にアクセルは敗れ、冴子はユートピアに拉致された。

 

若菜の居る『CHARMING RAVEN』に連れて来られた冴子の前で、加頭はネオンにガイアインパクトについて説明する。それは、メモリ適性の無い人間を瞬時に消滅させる、人類選別の儀式だった。しかも加頭は若菜をデータ化して財団の人工衛星にインストールして、地球規模でそれを行うつもりだった。話を聞いたネオンはミュージアムへの投資再開の要請を検討すると告げて去った。見送った加頭は、冴子にタブーメモリを差し出す。

 

事務所では、フィリップが若菜の居場所を検索していた。キーワードは「ミュージアム」「財団X」「施設」 だが、関連施設は風都内に大小27箇所も存在した。照井は虱潰しに当たろうと提案するが、ここでフィリップが、サーキットで冴子が言った言葉を思い出した。

「今頃きっとお父さんもお墓で泣いてるわ」

父・琉兵衛は埋葬されていないのに何故「お墓」なのか? 

閃いたフィリップが、キーワードを追加した。

「墓」

導き出された答は「CHARMING RAVEN」。社名の一部に「GRAVE」、つまり「墓」という単語が含まれている為だ。あの言葉は冴子からのヒントだったのだ。早速若菜を助けに行こうとするフィリップだが、翔太郎はフィリップが消える事を諦め切れていなかった。

事務所を飛び出した翔太郎はシュラウドを呼び出す。現れたシュラウドはフィリップの消滅を認めたが、されでも納得行かない翔太郎は「フィリップを救う事はオヤジさんから頼まれた最もデッカイ依頼だ!」と喚く。するとシュラウドが、鳴海荘吉にフィリップ救出を依頼したのは自分だと告白し、翔太郎にフィリップが笑顔で消えられる様にしてくれと頼む。拒絶する翔太郎を残して、シュラウドは姿を消す。

 

何の解決策も得られないまま、翔太郎が事務所に戻ると、そこでは「フィリップ海外留学おめでとうパーティー」が催され、照井、刃野、真倉、ウォッチャマン、サンタちゃん、クイーン&エリザベスとちう面々が集まっていた。フィリップが皆にプレゼントを配っている。どうやら亜樹子の差し金らしい。亜樹子を問い詰める翔太郎に、亜樹子はフィリップの思い出作りだと説明し、戦うのは明日にしてと頼む。

亜樹子に促されてフィリップが挨拶する中、翔太郎はやり切れない思いでデスクに戻る。するとフィリップが、翔太郎にもプレゼントを持って来た。だが翔太郎は背中を向けたまま一顧だにしなかった。

 

翌朝、翔太郎、フィリップ、照井、亜樹子は「CHARMING RAVEN」に乗り込み、若菜を見つける。その若菜は、頭部に検索機を付けられていた。その検索機は加頭の持つ端末と連動していた。ユートピアな変身する加頭に対して、変身さようとするフィリップだが、肝心の翔太郎が変身を躊躇してしまう。その間にユートピアによって吹き飛ばされてしまう。ユートピアは若菜を連れ去るが、アクセルが止めに入る。しかしユートピアはアクセルを問題にしない。フィリップは尚も翔太郎に変身を要求するが、やはり翔太郎は躊躇ってしまう。

ユートピアはトライアルをも圧倒、照井の気力を奪ってアクセルに戻した上で業火に包む。その様子を見たフィリップがショックを受けて慟哭すると、若菜の身体が光を放ち始めた。それまで低かった若菜の能力の数値が上昇した。フィリップが精神的に苦痛を感じると若菜の力が増大する事に気づいた加頭は、変身せずに戦う翔太郎を捕らえ、こう言った。

「ちょっと死んでみてください」

 

以上が、今回のストーリーです。

今回ばかりは、翔太郎の優しさが徹底的に裏目に出ます。

次に変身すると身体が消滅してしまうフィリップを気遣う余りWへの変身を躊躇してしまい、結果またしても照井に重傷を負わせてしまいます。更には、加頭の望む結果にも近づく事になり、正に絶体絶命です。このままハーフボイルドのまま終わってしまうのでしょうか? それとも、見事なハートボイルドに昇華するのでしょうか? では、今日はこれにて失敬。