ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #25 「ポリス番外地」

こんばんは、松田悠士郎です。

 

今回のテキストは、「探偵物語」第25話「ポリス番外地」です。脚本は佐治乾さん、監督は小澤啓一さんです。「松田優作DVDマガジンVol.12」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。

 

渋谷のホテル「パルコ」の前を通りかかった服部が、ホテルの出入口前に停まっていた車を駐車違反だとしてナンバーを控え、従業員に持ち主に合わせろと詰め寄る。だがその場で金を渡され、あっさり引き下がる。それ以後もチョコチョコ金を巻き上げていた服部は、自宅謹慎を言い渡されて部屋に籠もっていた。そこへ東署の刑事が家宅捜索に来た。容疑は収賄。その中には松本も混ざっているのだが、積極的に捜索する他のふたりに対して、松本は消極的だ。

どうも、東署に赴任した牛島という課長が、綱紀粛正を図っているらしい。

服部は松本を捕まえて、金を巻き上げていた事を密告したのが誰か突き止めてくれと頼む。だが服部と親しい所為で、松本も署内で肩身の狭い思いをしていた。

同僚のふたりが服部から拳銃と手帳を没収して、松本と署に戻ると、服部の恋人と称する江本マリという女性が来ていた。マリによれば、最近服部に500万円渡したらしい。その場に居た牛島が、服部は警察の秘密情報を暴力団に漏らしていたと告げるが、金の事も情報漏洩も信じられない松本はマリに詰め寄るが、マリは服部の恋人だと言って譲らない。

松本は服部に電話でマリの事を訊くが、服部にも全く心当たりが無い。すると服部が、工藤にその調査を頼めと提案する。始めは渋った松本だが、仕方なく工藤探偵事務所へ向かう。

しかし、工藤は松本の頼みをにべもなく断りつつ、服部はハメられたと推理する。そこで、かほりが松本に協力を申し出る。松本は仕方なくかほりを伴って、マリが宿泊するホテル「OZ」へ向かう。

マリが泊まる部屋に乗り込んだかほりと松本は、マリが誰かと電話で話しているのを聞く。不穏な会話が終わった後で、かほりと松本がマリに服部との関係について尋ねるがマリは「愛し合っていた」と返す。部屋の灰皿には、パイプの物と思われる吸い殻が残っていた。また、かほりは「緒方法律事務所」からの封筒を発見する。緒方は工藤の知り合いらしい。

次にかほりは緒方法律事務所を訪れ、緒方弁護士の話を聞く。緒方はマリから警察の情報を貰っていたそうで、つい最近も5000万円渡したと言う。だが、緒方マリが持つ警察関係のコネの正体は知らず、全てマリを通してやり取りしていた。緒方の推測によれば、マリの持つコネは現職の刑事で、最近暴力団から500万円貰い、マリと恋愛関係らしい。

翌日、マリが死体で発見される。ホテルの部屋から転落したのだ。連絡を受けた牛島は、現場に行く前に松本に「服部に彼女が泊まっているホテルを教えなかったろうな?」と釘を刺す。その場はごまかした松本だが、牛島が出た後に慌てて服部に電話で確認した。実は既に松本が服部にマリの宿泊先を教えていたのだ。服部もその場はごまかすが、電話を切った後に顔を歪めて鏡を見た。その頬には、引っ掻き傷が付いていた。

服部はマリの部屋を訪れて、押し問答の後に揉み合いになり、その時にマリに顔を引っ掻かれていた。

現場に到着した牛島に、同僚が不審人物の目撃情報を告げた。それが服部だった。牛島に詰問されて、松本は服部にホテルを教えた事を白状する。牛島はその場で松本の手帳と拳銃を没収し、謹慎を命じた。同僚は、服部を捕らえに行った。

再び工藤の元へ行った松本だが、工藤に散々責められる。その責めは工藤の名刺を勝手に使ったかほりにも向けられた。その上で工藤は、今回の事件に関する推理を披露した。

まず、服部の犯行に見せかけたり、証拠隠滅ができるのは同じ警察官しか居ない。

次に、何故服部が生贄にされなければならないのか? 人は思わぬ所で恨みを買っているもの、という事は服部とマリは以前に何処かで接点があったという事。この2点から、服部が過去に関わった事件から調べろと工藤はアドバイスするが、肝心の事件のファイルや服部の手帳は牛島に押さえられている。

同僚達を使って、裏で糸を引いているのは牛島だという工藤の推理を、松本は半信半疑で聞いていた。

かほりは、牛島の自宅を訪ね、応対した妻の夕子に警察官の勤務状況調査の名目で牛島の事件当時のアリバイを訊く。強い睡眠薬を常用している夕子は、昨夜は薬を飲んで寝ていたのでその時間は自宅に牛島が居たかは判ららず、更に寝室は別々にしていると告げ、力無く笑った。松本は東署へ行き、居合わせた同僚達を上手く追い払って牛島のデスクを探り、服部の手帳を盗み出す。

服部の手帳を見た工藤は、中のページが一枚破れている事に気づく。だが、その下のページに筆圧で窪んだ後を発見して、鉛筆を使って筆跡を読み取った。そこには、「パルコ」で服部が書き取った駐車違反車のナンバーが書かれていた模様。このナンバーがマリの車の物だと松本が気づく。これで、服部とマリの接点が見つかった。そこで工藤はナンシーに、弁当持参で服部に面会して、破れたページの事を訊く様に命じた。

松本に送られて東署へ行ったナンシーが服部から聞き出した情報を元に、ふたりは「パルコ」へ行って、従業員に牛島と同僚ふたりの写真を見せて、見た事がある人は居るかと尋ねる。従業員が見たのは、牛島だった。

松本は東署に乗り込み、取調室で牛島に疑惑をぶつけた。その上で、松本は服部を留置場から出せと要求するが、牛島はあくまでも服部は殺人罪だと突っぱねる。怒った松本が、牛島を殴ってしまう。牛島は「これで俺もお前を殺す事ができる」と、正当防衛の名の下に拳銃を松本に突きつける。そこへ入って来た同僚のひとりに、「上官暴行罪だ」と告げて松本を拘束する様に命じて立ち去る。同僚は松本を殴って手錠をかけるが、松本が反撃して、同僚を蹴散らして逃走する。

かほりは、マリか経営していたクラブに行き、ホステスにマリの恋人について訊くが、そのホステスも恋人の正体は判らなかったと言う。次にかほりが牛島が店に来たか訊くと、事件当日に地元の刑事と共に来店したと証言した。つまり、マリの死亡推定時刻には、牛島はこの店に居た事になる。アリバイ成立だ。

松本が工藤探偵事務所へ飛び込むと、工藤は風俗に行って不在だった。かほりが牛島のアリバイ成立を教えるが、松本は信じようとしない。松本は、牛島に電話をかける様にかほりに頼む。だが牛島は署におらず、マリの遺体を引き取りに病院に行ったらしい。そこで松本は、かほりに何かを言い含めてかほりを病院に向かわせる。

病院の霊安室で牛島と会ったかほりは、牛島が夕子を高額の治療費が必要な病院に2年間入院させていた事実をぶつける。牛島は収賄を認めたものの、証拠は無いとも言った。

牛島は、自分にとって夕子は経済的にも精神的にも支えになっていたと告げる。かほりが裕子とマリのどちらを愛していたのか?と尋ねると、牛島はどちらも大事な人で、マリは宝物だと言った。

服部が責任を感じて自決しても止めないと言う牛島に、かほりが「他に犯人が居ると思いたくないんでしょ?」と言うと、牛島が顔色を変えてかほりに近づいた。そこへナンシーが飛び込み、工藤の名刺を牛島に示してから、工藤が真犯人を突き止めたから明日の午前中に事務所に来いと告げた。

その工藤、朝になってやっと風俗から戻って来た。寝ようと寝室に向かうと、待ち伏せしていた牛島の襲撃を受ける。あわや射殺か?という所でデスクの下に隠れていた松本がラジカセを抱えて登場、今の会話を録音したと牛島に告げる。だが牛島は松本をも射殺しようと試みる。その時、かほりとナンシーが夕子を連れて現れた。そして、夕子がマリを突き落としたと告白した。夕子はマリに牛島を取られると思い、それを阻止しようとして断られた為に、思い余ってマリを突き落としてしまったのだ。

松本は夕子に手錠をかけ、連行した。

説諭で済んだ服部は、相変わらずの調子で松本やかほり達を呆れさせた。

 

以上が、今回のストーリーです。

この話では、工藤は事務所で文句を言っているだけでほぼ何もせず、松本刑事がかほり&ナンシーを伴って大活躍します。

それでも、工藤は日頃角突き合っている松本に対して己の推理を披露してヒントを与える等、ちょっとだけ優しさを見せます。仲間の危機をどうしても救いたいと奔走する松本を、見捨て切れなかったのでしょう。

 

やはりハートボイルド味は薄めですが、「探偵物語」の幅の広さを示した作品のひとつだと言えるでしょう。では、今日はこれにて失敬。