ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #18 「犯罪大通り」

こんにちは、松田悠士郎です。

 

今回のテキストは、「探偵物語」第18話「犯罪大通り」です。この回に、熊谷美由紀さん(現・松田美由紀さん)がゲスト出演しています。余談ですが、オープニングのテロップは、ただしくらい表記されていました(#1参照)。脚本は井戸昌雄さん、監督は小澤啓一さんです。「松田優作DVDマガジンVol.09」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。

 

冒頭、工藤は街で矢を撃ち出す拳銃を使う、右耳に補聴器を付けた男と遭遇、その男が撃ったサンマを貰う。

故買屋の飯塚の店で会った篠田権三郎という中年の男から、銀子という女性を探してくれと頼まれる。何でも、篠田と銀子は大阪のたこ焼き屋で知り合い、歌手になる為に上京する銀子と東京で会う予定だったが、行方が判らなくなったらしい。篠田は補聴器の男の事を殺し屋だと断言し、所持していた南部十四年式拳銃を飯塚に売った金を手付金として工藤に渡す。何故か篠田は、ブラジルに異常に拘っていた。

翌日、催促の電話をかけてきた篠田をあしらった工藤は、かほりとナンシーとの会話からヒントを掴み、レコーディングスタジオを当たる。果たして、銀子はスタジオに来たらしいが、その時は自分が土地成金の娘で父親がゴルフ場を経営していると言っていたらしい。それで、運動資金を1億円用意できると豪語していたと言う。

次に工藤は、オーディション番組を放送するテレビ局に潜入、そこで歌う銀子を見つける。

銀子がホテルの部屋で1億円の金勘定をしている所へ工藤が入って、金を確認してから何故篠田との約束をすっぽかしたのかを訊く。銀子は篠田との関係をはぐらかそうとするが、結局事情を話す。

たこ焼き屋で篠田に「1億円あったらどないする?」と訊かれた銀子が「ブラジルでたこ焼き焼くわ」と答えた所、後日本当に篠田が1億円用意したのだ。

銀子は流行歌手になって有名になれば、蒸発した父親が出て来ると考えていた。もしも父親が現れたら、ひと言恨み言を言うと息巻く。

工藤がホテルの窓から下を見ると、例の殺し屋の姿があった。工藤は慌てて銀子と共に部屋を脱出する。

その後、工藤が露天の脇で新聞に目を通していると、篠田を見つける。だが篠田は工藤に近づこうとした直後に何かに気づいて踵を返して逃走する。不審に思った工藤が篠田を追うと、またも殺し屋と遭遇する。

工藤は手土産持参で東署へ行き、服部から殺し屋の情報を得る。

遊園地の観覧車の中で、工藤は篠田に1億円の出所について聞く。

大阪の私立大学で発生した横領事件に絡み、篠田が所属する暴力団が警察より先に金を押さえようとしていた。だが横領の犯人である経理担当の大貫は、金を隠した上でその場所を秘匿した。篠田は組に内緒で大貫を助けて金を預かり、銀子に持たせたのだが、その銀子が約束を破って逃げてしまったのだ。

篠田は本気で、銀子とブラジルでたこ焼き屋をやるつもりだった。かつて幹部だった篠田も今は使い走りをやらされる様になったので、退職金代わりに1億円を頂いて、銀子と本当の家族になりたかったのだ。

篠田の話を聞いていた工藤が外を見ると、例の殺し屋が来ていた。工藤と篠田は別々に観覧車から出て逃走、殺し屋は篠田を追った。ゲームセンターで追い詰められた篠田に、殺し屋が矢を放ったその時、工藤が缶ビールを投げ込んで篠田を救う。工藤は殺し屋を引きつけて篠田を逃がし、自らも逃げおおせる。

篠田との待ち合わせ場所に指定した飯塚の店で、工藤は大貫の横領事件に関する新聞記事に目を通す。だが肝心の篠田が姿を見せない。

妊婦を装い、腹の中に金を隠してホテルを出て行こうとする銀子を工藤が呼び止め、部屋に戻す。そこで篠田の行方が判らない事を告げ、銀子に強い口調で篠田の事を見捨てて行くのかと尋ねる。その時に、またしても例の殺し屋が来ている事に気づいた工藤、たまたま殺し屋と目が合ってしまったので銀子を連れて逃走する。

ふたりで入ったラーメン屋で、工藤は篠田が車に轢かれそうになった子供を助けて入院した事を新聞記事で知る。だが、その入院先に大貫が現れ、篠田を連れ去ってしまう。

大貫は事務所に電話を入れ、工藤に篠田と1億円との交換を持ちかける。工藤がその事を銀子に伝えると、銀子は迷った挙げ句に篠田を助ける事に合意する。

工藤は1億円(実はニセ金)を持って取引の場所に行くが、篠田を離せと要求する工藤に対して、大貫は金が先だと譲らない。起こった工藤は金を燃やし始め、しまいには通りかかったゴミ収集車の荷台に投げ込んでしまう。所が、ニセ金だと知らない篠田が収集車を追って行ってしまう。すると、殺し屋が現れて篠田が取り付いた収集車に取り付く。工藤は銀子に、事務所に戻って金を隠したコインロッカーの鍵をナンシーに貰えと言い残してベスパでふたりを追う。

事務所に戻って140番通報した銀子が、事務所に入って来たかほりとナンシーに鍵を貰おうとすると、そのロッカー全体が警察に押さえられてしまったと言う。

東署に運ばれた1億円を服部達が検分していると、大貫が現れて自分の金だと主張するが、松本に素姓を気づかれて逮捕される。

ゴミ処分場で対峙する篠田と殺し屋。止めに入ろうとする工藤の目の前で、殺し屋の撃った矢が篠田の胸に直撃する。だが、治療の為に身体に着けていた医療器具のお陰で致命傷にはならなかった。駆けつけた服部達により、篠田と殺し屋は連行された。

事情聴取を終えて東署から出て来た銀子を、工藤は相合い傘で駅まで送った。その上着のポケットには、いつの間にかくすねた札束が入っていた。

 

以上が、今回のストーリーです。

次回予告でも喋っていますが、台詞の多くが大阪弁になっています。

今回、工藤の優しさは篠田に向けられます。たこ焼き屋で出会った銀子を可愛がり、本当の娘にしたいと願う篠田の気持ちを、工藤はしっかりと受け止めます。

一方で、その篠田との約束を破って自分の目的の為に1億円を使おうとする銀子に対して、工藤の怒りが向きます。自分の夢を託した篠田の思いを踏みにじる様な行動を取り続ける銀子が、許せなかったのでしょう。

 

人情味を感じる佳作に仕上がっています。これもまた、ハートボイルドと言える作品でしょう。では、今日はこれにて失敬。