ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #26 「野良犬の勲章」

こんばんは、松田悠士郎です。

 

今回のテキストは、「探偵物語」第26話「野良犬の勲章」です。脚本は柏原寛司さん、監督は、助監督から昇格してこの作品が初監督となった飛河三義さんです。「松田優作DVDマガジンVol.13」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。

 

ある窃盗グループによる窃盗事件の数々は、被害総額が2800万円にまで及んでいた。しかも、そのグループは元警視庁副総監宅に侵入して、現金120万円と宝石類、更にはかつて元副総監が賜った勲章(勲一等瑞宝章)を盗んで行った。

この事件を解決して勲章を取り戻す為に、服部&松本コンビは工藤を接待して捜査を頼む。最初は渋る工藤だったが、服部から好きな様にやって良いと言質を取って捜査に乗り出す。

警察は窃盗グループの主犯として宮坂四郎という男を逮捕したが、金や勲章の在処は絶対に言わなかった。そこで、宮坂を泳がせて隠し場所を暴き、グループを一網打尽にしようと画策した工藤達は、丁度恐喝未遂(但し相手は幼稚園児)で拘留されていたイレズミ者を宮坂と共に護送車に乗せて、護送車の故障の隙にふたりして逃がす事にした。まんまと逃亡したふたりだが、宮坂はイレズミ者と別れようとする。

自動車解体業「前島自動車」の事務所の中では、責任者の前島と仲間の鈴木、田山が宮坂逃走の件について話していた。彼等こそ、件の窃盗グループだった。宮坂が前島達の所に姿を現さない為、前島は宮坂が女の所に潜伏していると睨んだ。

果たして、宮坂は前島の推測通り恋人のユミの部屋に転がり込んでいた。「これからどうする気?」と訊くユミに、宮坂は煮え切らない態度を取る。半ば呆れたユミがアルバイトへ出て行こうとすると、玄関前に人が居ると戻って来る。宮坂が見に行くと、そこにはイレズミ者が居た。宮坂は仕方なく、イレズミ者を部屋に入れた。

翌朝、ユミが大学へ出た後、イレズミ者は宮坂に煙草を買いに行くと言って出て行き、工藤探偵事務所に連絡を入れる。その時事務所では工藤、服部&松本コンビ、かほり&ナンシーコンビがポーカーに興じていた。イレズミ者によれば、勲章の在処はまだ判らず、今は高飛びをすすめているらしい。

イレズミ者が外出している間にふと窓の外を見た宮坂は、外に停まった車の中に鈴木と田山を発見する。慌てた宮坂は、戻ってきたイレズミ者を伴って裏口からアパートを出る。だが、すぐに車のふたりに見つかってしまう。

そうと気づかない宮坂は、スーパーに入って包丁を2本取り、1本をイレズミ者に手渡すと、レジから金を奪って逃走する。

服部&松本コンビは麻雀や花札でかほり&ナンシーに負けまくり(ついでに工藤も負けてる)、そこへスーパーで宮坂達が強盗を働いたと電話で聞かされたので、ブチ切れながら事務所を出て行った。

宮坂はイレズミ者と金を山分けするが、一向に窃盗事件で得た金の隠し場所に行こうとしない。それ所か、宮坂はユミが居る恵泉女子大学へ行って、ユミに一緒に逃げようと提案する。そこで、宮坂はユミに前島の事を話す。

ユミに忠告された宮坂はイレズミ者を殴って気絶させる。そこへ鈴木と田山が乗った車が猛スピードで近づいて来た。宮坂は何とか逃走する。

一方、任務に失敗したイレズミ者は事務所で工藤達に吊るし上げられていた。怒り心頭の服部に命じられて、仕方なく工藤自身が捜査に乗り出した。

工藤はまず骨董屋の飯塚に、窃盗グループが奪った宝石や勲章を捌く事を見越して情報収集を頼む。

宮坂は再びユミと落ち合うが、ユミに自首を勧められても頑なに拒否し、前島達にいっぱい食わせると息巻く。そんな宮坂を見かねたユミが、一緒に逃げようと提案してアパートに戻る。しかし、宮坂はひとりで路面電車に乗り込む。

工藤はカマオカという男(?)に宮坂の事について話を聞く。

宮坂は山形の農家の出身で、集団就職で上京したものの、人間関係が上手く行かなかったらしい。

次に工藤はユミを訪ねる。ユミは宮坂が待っている筈なのに居なくなっていたと話す。工藤が宮坂の仲間の事を尋ねると、ユミは急に部屋に戻ってしまう。

「前島自動車」では、山崎が宝石や勲章を鑑定していた。鑑定を済ませた山崎は1時間後に取引をする約束で「前島自動車」を出た。

ユミは裏からアパートを出て、タクシーで「前島自動車」へ向かう。その頃、工藤は伝令役のイレズミ者と合流し、「前島自動車」へ急行する。

前島達が高飛びしようとしている所へ、宮坂が現れる。分け前を要求する宮坂を、前島

は拳銃で射殺しようとする。宮坂の危機を救ったのは、ユミだった。ユミが古タイヤを投げ込んで事務所の窓を割り、前島達が驚いた隙に宮坂が前島の拳銃を奪い、鈴木と田山を殴り倒して前島を金の所へ案内させる。だが、前島が車のトランクから出したバッグに宮坂が気を取られる隙に前島が拳銃を奪い返す。慌てて逃げる宮坂とユミを、前島達は拳銃を片手に追いかけ始める。工藤とイレズミ者はその様子を廃車の上で眺めていたが、宮坂の危機にイレズミ者が助けに行ってしまう。しかし、鈴木と田山にあっさりやられる。

宮坂を追う前島を、工藤が得意のハッタリで止め、鈴木と田山も一緒に連れて行って勲章を出させる。そこへ何故かイレズミ者が棒を持って乱入、誰彼構わずメッタ打ちにする。そこへ警察が到着するが、服部&松本コンビは前島達そっちのけで勲章を血眼になって探す。何故か工藤はその場に居ない。

暴れるイレズミ者を押さえた宮坂は、ユミの事をイレズミ者に託して自ら出頭する。それでも勲章の事しか頭にない服部達に、やっと現れた工藤が勲章を示す。

 

以上が、今回のストーリーです。

この話では、2代目イレズミ者(演:前田哲朗さん)が大活躍します。工藤は前半は殆ど遊んでいて、探偵らしい事をするのは後半のみです。なので、さすがに今回はハートボイルドの要素を求めるのは厳しいです。

ただ、冒頭の留置場のシーンで、恐喝未遂でブチ込まれたイレズミ者に将来の事等を尋ねている所に、何とか仲間への優しさを見られるのではないでしょうか。若干無理矢理な気もしますが。

 

探偵物語」も、残す所あと1話です。では、今日はこれにて失敬。