ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #15 「脅迫者」

こんばんは、松田悠士郎です。

 

今回のテキストは、「探偵物語」第15話「脅迫者」です。脚本は柏原寛司さん、監督は村川透さんです。「松田優作DVDマガジンVol.07」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。

 

電話で呼び出された工藤は、待ち合わせ場所の球場へ向かう。すると、突如頭上から材木が落ちて来る。不審に思った工藤が球場内へ入ると、次々と材木が落とされる。最終的に観客席へ出て来た工藤を中年男が材木を使って襲うが、あっさりかわされる。男は工藤を気に入ったと言い、仕事を頼みたいと持ちかけるが工藤は怒り心頭で拒否。立ち去る工藤に、男は田畑と言う自分の名前と定宿にしている旅館の名前を告げる。

その後、工藤宛にリターンアドレス無しの封筒が届く。中には現金と鍵と手紙が入っている。差出人は田畑だった。

田畑に会いに行った工藤は、旅館の使用人から行きつけの飲み屋を教えられる。果たしてそこに居た田畑は、現れた工藤にまた依頼をしようとするが、工藤は断固として拒否する。

店を出た工藤に追いすがる田畑は、今回の仕事には相棒が必要だと執拗に誘う。そこへ、数人の男達が田畑に因縁をつけて来た。巻き込まれた工藤は何とか逃げおおせるが、田畑は逃げ切れずに男達に連れ去られてしまう。

工藤が飲み屋の主人に田畑の事を尋ねると、田畑がかつて新聞記者だったと聞かされる。その新聞社では、田畑は代議士に金をせびってクビになり、バーの女に入れ上げて妻と離婚したと知らされる。工藤はそのバーと女の名前を聞き出して向かう。

「スコッチバー 渚」のママで田畑の愛人の礼子から、行方不明になった田畑を探して欲しいと頼まれた工藤は、渋々調査を開始する。

因縁をつけて来た男達が乗っていた車のナンバーから、「森岡商事」に辿り着いた工藤は、そこで服部&松本コンビと遭遇する。服部達の質問を企業秘密を盾にかわした工藤は、「森岡商事」の車を追跡して、ビル建設予定地に着く。だが警備員に止められて中には入れない。

その中では、田畑が薬を打たれて森岡の訊問に素直に答えていた。質問は、岡部代議士の事と、自殺した菊池部長の日記の有無と所在だった。目当ての日記が銀行の貸金庫にあると知った森岡は、田畑の情報を元に鍵を持っている工藤を捕らえようとする。

戻ってきた工藤は、事務所に上がる途中で不審な気配に気づく。奇策を用いて待ち伏せていた男達を誘い出した工藤は、ふたりを退治して逃亡。やられたふたりが事務所を張り込んでいると見た工藤は、ナンシーに電話して縄梯子を要求する。

ビル建設予定地に入る「森岡商事」のトラックに隠れて中に侵入した工藤は、偽の鍵(探偵事務所の鍵)と偽ダイナマイト(実は1本だけ本物が入っている)を駆使して田畑を救出するが、ナンシーが用意した縄梯子は使い物にならず、田畑が見つけた縄梯子で建設予定地から逃亡した。

「渚」に入った工藤と田畑は、再び仕事の話で揉める。田畑は岡部代議士と「森岡商事」の繋がりと、原子力プラント関連の汚職をネタに岡部を強請ろうと画策していて、工藤に協力を求めるが、工藤は預からされていた鍵と金を礼子に返した上で、田畑の依頼を突っぱねる。

工藤に断られた田畑は岡部と森岡に取引を持ちかけ、単身で待ち合わせ場所の大黒埠頭へ向かう。

貸金庫の鍵と引き換えに五千万円を受け取った田畑だったが、拳銃を持った男達に囲まれる。

礼子からの電話で田畑の目的が金ではなく岡部の政治生命を絶つ事だと知った工藤は、田畑を助ける為に大黒埠頭へ急行する。

工藤が到着した時、田畑は死にかけていた。それでも田畑は工藤に岡部達との会話を録音したテープを渡す。工藤は救急車を呼ぶと田畑に告げてその場を走り去るが、田畑は直後に息を引き取った。

貸金庫から日記を出した「森岡商事」の連中に、服部&松本コンビが話しかける。逃亡を図る男達を、物陰から飛び出した工藤が退治して松本に逮捕させる。ご機嫌で立ち去る工藤に、服部が田畑の死亡を告げた。

 

以上が、今回のストーリーです。

執念深い元記者に工藤が振り回される、スリリングな話です。

工藤は田畑に散々迷惑をかけられますが、それでもギリギリ見捨てないで助けます。この辺りが工藤の優しさでしょう。今までとは少し異なる形でのハートボイルドの体現と言えるでしょう。

 

硬軟取り混ぜた、飽きさせない作品です。尚、今回参考文献として「松田優作と七人の作家たち」(李建志著)を参照しました。では今日はこれにて失敬。