ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #20 「逃亡者」

こんにちは、松田悠士郎です。

 

今回のテキストは、「探偵物語」第20話「逃亡者」です。脚本は桂千穂さん、監督は村川透さんです。「松田優作DVDマガジンVol.10」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。

 

工藤がベスパで走っている時に、横道から出て来た男と接触してしまう。その男=小高明を病院に連れて行った所、工藤が探偵だと知った小高から謎の包みを渡されて、表参道の「プレイバッハ」という店にいる大乃木茜に渡して欲しいと頼まれる。怪我をさせたと思っている工藤は仕方なく、「プレイバッハ」へ行って茜に包みを渡す。受け取った茜が中身を確認すると、500万円の札束だった。何かを察した茜は工藤に小高の所へ連れて行ってと頼む。

茜を連れた工藤がが病院に戻ると、小高は急に退院したと告げられる。すると茜は札束を工藤に押しつけ、小高に返してと言い残して立ち去ってしまう。

プロボクサーである小高が所属する「宮武ジム」では、トレーナーの大沼が酒を飲んで暴れていた。見咎めた責任者の宮武がどやしつけると、怪しげな男ふたりが姿を現した。ふたりは、前夜に行われた小高の試合を観戦していて、金を持って逃げた小高を追っていた。実は小高は八百長を持ちかけられて、その見返りに500万円を貰っていたが、約束を破って試合に勝ってしまい、逃亡していた。その途中に工藤と接触事故を起こしたのである。

ふたりを見た宮武が不快感を露わにすると、ふたりはジムから出て行った。その後に訪ねて来た工藤に、小高は破門だと告げて追い返す。

次に工藤は、小高が勤めていた新聞配達の事務所を訪ねて話を聞く。すると、先程のふたりが因縁をつけて来る。工藤は事故の治療代請求の為に小高を探していると告げてその場を離れる。

工藤は、小高の住んでいるアパートの部屋に入り、中を物色する。スクラップブックの中に茜とのツーショット写真を見つける。その茜が部屋に現れると、工藤は小高の立ち回り先について訊くが、茜は何も知らないとにべもない。500万円の出所を怪しんだ工藤が、八百長について尋ねるも、確証は得られない。

工藤がダンディに電話で小高の試合を仕切った興行主の調査を頼んで戻ると、例の二人組に茜が襲われていた。窓から飛び込んで茜を助けた工藤だが、通行人に痴漢と勘違いされて東署に連行される。だが取り調べに当たった松本を丸め込んで、暴力団関係者の資料ファイルを閲覧する。その中に、見覚えのある顔があった。名前は桜田郁造。

一方、ダンディからの情報によれば、小高の試合を仕切った興行主は金剛興行と言い、関西の暴力団と繋がりを持って、八百長試合等を仕掛けているらしい。

工藤と共に事務所に来た茜を、何故かかほりとナンシーがワインで祝福する。実は茜は小高との子を身ごもっていたのだ。茜によれば、小高との喧嘩の原因が妊娠発覚らしい。工藤は、小高が金を手にした理由を察する。

宮武ジムから大沼を連れ出した工藤は、小高が大沼に手紙を出した事を知る。封筒の消印は、伊良湖だった。

小高は伊良湖の生花園で働きながらトレーニングを積んでいた。その生花園に、茜が現れる。

500万円を返して立ち去ろうとする茜に、小高は子供を始末しろと告げる。その費用にと再び500万円を渡そうとするが、茜は拒絶して立ち去る。すると、桜田と安井が車で現れて、茜を拉致する。

茜を追いかける途中で工藤の襲撃に遭った小高は、工藤の持っていた棒を奪って逆襲、逃げた工藤を追いかけて行った先で桜田から、茜を返して欲しかったらビューホテルに来いと言われる。小高は工藤に捨て台詞を残してビューホテルへ向かう。

ロビーで桜田と安井に会った小高は、プールに連れて行かれ、そこで金剛興行の社長・金剛と会う。小高は金を返して茜の居所を訊くが、金剛は小高を罵って立ち去り、残った桜田と安井が小高に暴行を加える。

一方、金剛の後を追ってホテルの部屋に入り込んだ工藤は、金剛を銀玉鉄砲で脅して小高達の行き先を聞き出す。

桜田と安井は茜の監禁場所に行き、見張りをさせていた大沼をせき立てて茜を車へ連れて行く。既に車には小高が乗せられていた。小高を見つけた大沼は、身体を張って小高と茜を逃がす。桜田と安井は大沼を拳銃で撃ち、小高達の後を追う。

断崖に追い詰められた小高と茜は、二人組から銃弾を浴びせられて、小高が被弾する。絶体絶命の危機を救ったのは、金剛を連れて現れた工藤だった。崖から飛ぶ様に脅された金剛はその場で失神、桜田は海に落下、安井は工藤の「地上最強のカラテ!」で倒される。小高と茜を無事に助け出した工藤だが、自らも崖から落ちて大怪我を負ってしまった。

 

以上が、今回のストーリーです。

八百長を蹴ったプロボクサーとその彼女に振り回されつつも、工藤が見事に(?)ふたりを助けました。

今回、工藤の優しさと怒りは、小高の彼女である茜に向けられました。

小高から渡された金を押しつけられ、更には妊娠を隠していた茜に対して

怒りを向ける様子には、筋を通さない相手への義憤が窺えますし、そんな相手でも暴行されそうになっていた時には俊敏な動きで救出し、小高の潜伏先を割り出したら連れて行って会わせています。

小高に対しても、棒で殴ったりしておいて茜の元へ向かう様に仕向けたり、キッチリ後を追って助けている。表面的にはひねくれながらも、関わった相手を無下にしない、工藤の優しさが見受けられます。

話の殆どが伊良湖ロケの為か、どことなく開放的な雰囲気が漂う一作です。では、今日はこれにて失敬。