ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #14 「復讐のメロディー」

こんばんは、松田悠士郎です。

 

今回のテキストは、「探偵物語」第14話「復讐のメロディー」です。脚本は那須眞知子さん、監督は村川透さんです。「松田優作DVDマガジンVol.07」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。

 

夜の街で、工藤は女性に声をかけられる。その女性=大杉亜木子は、殺人の罪を着せられて自殺した夫の濡れ衣を晴らして、真犯人を探して欲しいと依頼する。工藤が難色を示すと、亜木子は自分ひとりでやると言い出す。見かねた工藤は、依頼を受ける事にした。

 

相木マサコの協力で亜木子の夫である大杉弁護士の資料を得た工藤は事件について調べると、大杉が犯人像と繋がらない事に疑問を抱く。

事件の証言をした人達に話を聞くと、どうやら事件を担当した西田という刑事の誘導尋問があったらしい。

工藤がマサコのアドバイスで、今回の事件に似たケースが無いか調べてみると、八王子で一件、似通った事件を見つけた。その事件は、宝石が盗まれている事以外は、被害女性が暴行されて絞殺されている所、犯人の体液がO型である所、そして第一発見者が西田である所と、類似点が異常に多かった。

工藤は飯塚に盗まれた宝石を捌いた人間を探らせ、自らは西田に直接疑問をぶつける。だがその西田は工藤の疑問を一笑に付した。

工藤が事務所に戻ると、亜木子が来ていた。工藤がこれまでの調査結果を話すと、亜木子は西田の名前を出す。どうも亜木子は西田を知っている模様。工藤の話を聞かず、亜木子は事務所を出た。

西田が帰宅すると、待ち伏せていた亜木子が包丁を構えて西田に襲いかかった。だが逆に暴行されて、工藤の所へ突き返される。

翌日、亜木子は姿を消した。工藤はマサコに話を聞くが、手掛かりは無かった。

事務所に戻った工藤に、かほりとナンシーが現金書留を渡した。差出人は亜木子だった。工藤は消印を頼りに蓼科へ行き、亜木子の行方を探す。そして、山中でサンドバッグに向かってライフルを撃ち、西田への憎悪をぶつける亜木子の姿を目の当たりにする。

東京に戻った工藤が西田を張り込んでいるど、服部&松本コンビの横槍が入る。それでも西田を自宅前まで追跡した工藤は、亜木子を見つけてふたりの間に入る。狙撃に失敗した亜木子を事務所に連れて行った工藤は、ライフルと銃砲所持許可証を取り上げる。

翌日、飯塚が事務所の下から電話をかけて来た。工藤はライフルを隠して事務所を出て、飯塚から宝石を捌いた人間の情報を得る。その山本という男は、西田の犯行を目撃した所為で身の危険を感じていた。工藤が飯塚に山本をマサコの所へ連れて行く様に指示して事務所に戻ると、亜木子が姿を消していた。工藤は西田のマンションに行くが西田は不在、署に問い合わせると休暇で実家の牧場へ帰っていると聞かされる。

工藤は牧場へ行くが、必死の追走にも関わらず亜木子は西田を射殺してしまう。

 

以上が、今回のストーリーです。

全体的に暗く重い空気が支配する、とてもシリアスな話です。笑いも少なく、どちらかと言うとハードボイルド寄りな仕上がりです。

そんな中で工藤が優しさを向けるのは、やはり依頼人である大杉亜木子です。

亡き夫の無念を、自分ひとりででも晴らそうとする亜木子の姿にほだされて依頼を受け、西田を殺そうとした時には身体を張って止める。亜木子を犯罪者にしたくない工藤の思いがよく伝わって来ます。それだけに、亜木子が西田を射殺した瞬間の工藤の表情には、言いようのない無力感と寂寥が漂っています。それでも、本懐を遂げて去る亜木子に何も言わない工藤に、屈折した優しさを感じずにはいられません。

 

余談ですが、亜木子を演じた范文雀さん、初めて観たのは「Gメン′75」でしたが、とてもお綺麗な方で、好きでした。お亡くなりになったのは残念です。では今日はこれにて失敬。