ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #16 「裏切りの遊戯」

こんばんは、松田悠士郎です。

 

今回のテキストは、「探偵物語」第16話「裏切りの遊戯」です。脚本は内田栄一さん、監督は村川透さんです。「松田優作DVDマガジンVol.08」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。また、参考文献として「松田優作と七人の作家たち」(李建志著)を参照しました。

 

工藤の旧友のジョージが、ロサンゼルスから帰国して事務所にやって来た。だが工藤はジョージに説教をするなどまともに取り合わず、怒ったジョージは事務所を出て行く。

ジョージは警察無線を傍受し、代々木公園で起こった殺人事件の容疑者の人相風体が工藤に酷似している事を知り、売春婦のタエコを利用して工藤を代々木公園へ連れ出して警察に逮捕させようとする。だが現場に居合わせた服部&松本コンビによって工藤の嫌疑は晴れる。

計画に失敗したジョージは、タエコに100ドル渡して現場を去る。

ジョージはかつて横浜に居た頃、工藤の所為で婦女暴行の濡れ衣を着せられたと信じていて、お返しに工藤を無実の罪に陥れようとしているのだ。

そのジョージが次に狙いをつけたのは、月島にある倉庫だった。そこには暴力団が大量の武器を隠していて、警察が内偵中だった。

ジョージは工藤を呼び出すと、酒の席で工藤に月島に行ってくれと頼む。渋々受けた工藤は、倉庫に行ってジョージに聞いた合言葉(ちょっと間違っていたが)を連呼していた。すると日本刀で脅されて倉庫内に連れ込まれる。そこで組長から訊問されるが、途中で警察が突入する。巻き込まれて連行された工藤だが、またしても服部&松本コンビの力を借りて嫌疑を晴らす。

工藤が事務所に戻ると、タエコが来ていた。工藤はタエコにジョージの泊まるホテルを聞き出して張り込み、出て来たジョージを尾行する。

ジョージは喫茶店で男と会い、爆弾と金を手に入れる。次にチンピラ風の男達と合流し、打ち合わせをして別れる。工藤が尚もジョージを尾行すると、行き着いたのはタエコの家だった。ジョージは爆弾をプレゼントと称してタエコに持たせて、明日の3時まで開けるなと命じる。ジョージがタエコに工藤への復讐を語っていると、トンカチを持った工藤が乱入し、明日までここから出ない様に脅して去る。

翌日、タエコが事務所に電話をかけて来て、指定の場所に来てくれないとジョージに殺されると懇願する。仕方なく出向いた工藤は、落ち合った場所でジョージの仲間の男達を見かける。トラックとバイクに分乗した連中の後から、工藤はタエコと共に目的地へ向かう。所が、辿り着いた場所には警察がガッチリ警備を固めていた。工藤とタエコが警察官と揉めている所へ、炎上したトラックが突っ込んで来た。パニック状態になった現場から、工藤はタエコを連れて離脱する。タエコが持っていたプレゼントに不審を覚えた工藤が、タエコからプレゼントを奪って耳に当てると、時計の秒針の音が聞こえた。時限爆弾だと感づいた工藤は慌てて放り投げるが、ジョージからのプレゼントだと信じるタエコは拾いに行ってしまい、結果爆発に巻き込まれる。工藤は付近に居たジョージを見つけて呼び、車でタエコを病院へ連れて行く。幸い、タエコは一命を取り留めた。

工藤はジョージに制裁を加えて立ち去る。その遥か後ろには、怯えた目のジョージがついて来ていた。

 

以上が、今回のストーリーです。

工藤が旧友の復讐の対象となる、異色の話です。工藤はジョージの所為で散々な目に遭います。それでも、工藤はジョージをギリギリ見捨てないし、復讐の片棒を担がされたタエコの事も見捨てません。工藤の優しさが貫かれています。

一方で、タエコを自分の復讐の為に利用し、死ぬかも知れない事態になっても邪険に扱おうとするジョージに対して、工藤は怒りを露わにします。職業や立場で人を差別する事を嫌う工藤は、売春婦のタエコを馬鹿にしたジョージが許せなかったのでしょう。

 

ギャグも散りばめられていますが、基本は重厚な仕上がりです。では今日はこれにて失敬。