ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #17 「黒猫に罠を張れ」

こんばんは、松田悠士郎です。

 

今回のテキストは、「探偵物語」第17話「黒猫に罠を張れ」です。脚本は宮田雪さん、監督は小澤啓一さんです。「松田優作DVDマガジンVol.08」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。

 

家出猫探しに苦戦する工藤は、半ば勘違いで弁護士の犬塚が顧問を務める東亜火災保険に連れられ、そこで「怪盗黒猫」を名乗る人物に「水瓶を運ぶ女」という絵画が盗まれた事を聞かされる。工藤が連れ込まれた会議室には、保険会社の専務と秘書課長、警備会社の社長、それと絵画の持ち主の仁科蘭子が居た。犬塚達の話によれば、その怪盗黒猫から絵画を2億5千万円で買い取れと取引を持ちかけられたそうで、その取引現場に蘭子と共に行って、蘭子と絵画を守ってくれと頼まれる。難色を示す工藤だったが、専務から100万円出されて思わず引き受けてしまう。

取引当日、指定の場所に蘭子と来た工藤は、沖合の船上で釣りをする男を気にしつつ、取引相手を待った。すると、彼方から銃撃を受ける。工藤は蘭子を一旦逃がすが、その隙に別の男に現金が入ったジュラルミンケースを奪われる。追跡した工藤だが、男は用意していたモーターボートで沖へと逃げて行った。

工藤は犬塚達に散々責められた挙げ句、絵画と金を取り戻して怪盗黒猫を捕まえる事を約束させられる。

東署から怪盗黒猫に関する資料を失敬した工藤は、釣りをしていた男に会う為に港へ行く。船の持ち主によれば、その男は骨董屋を営む犀と言う中国人らしい。その骨董屋「奇人堂」に入った工藤は、そこで会った年配の男=犀から横浜マリーナへ行けと助言を受ける。言われた通りに向かった横浜マリーナで例のモーターボートを見つけた工藤、当日ボートを借りたのが「大和田組」という暴力団の幹部のカノウであると知り、「大和田組」を張る。その工藤を、犀が観察していた。

墓地でカノウと対峙した工藤は、銃を撃って逃げるカノウを追うが、何者かによってカノウが狙撃されてしまう。工藤が追跡するも狙撃手には逃げられる。そこへ犀が現れ、絵画を奪ったのは偽の怪盗黒猫で自分こそが本物の怪盗黒猫だと主張する。犯行現場に残されていた怪盗黒猫のカードの、本物と偽物の特徴を示した犀は、工藤に共闘を持ちかける。そこで、取引の電話をかけたのが犀だと聞かされた工藤は、偽黒猫は内部の人間だと推理、犬塚に頼んで関係者の身辺とアリバイを調べてもらった上で蘭子に会いに行く。海外旅行の準備をして、工藤に絵画の事は忘れてと告げる蘭子に、工藤は自分の推理を聞かせる。関係者の中でアリバイが無いのは中川ひとりだけ、その中川は6年前に怪盗黒猫が起こした浮世絵強奪事件を担当した刑事で、後に大和田組から賄賂を受け取っていたのがバレてクビになっていた。工藤は蘭子と共に中川のマンションへ急行するが、そこで中川と遭遇、蘭子を連れ去られてしまう。手近にあったバイクを拝借して中川と蘭子が乗った車を追う工藤、入り込んだ球場の中で一瞬ふたりを見失った隙に、中川が射殺される。工藤が中川の死体に近づいた時、拳銃を持った蘭子が工藤に銃口を向けた。全ては蘭子と中川の共謀だったのだ。工藤の危機を、犀が抱いていた黒猫が救う。その現場を見届けた犀は、煙の様に姿を消した。

「奇人堂」へ行った工藤は、全く別人の店主から絵画を受け取るが、一緒にもらった犀からの手紙には、絵画は偽物だと書かれていた。工藤が立ち去った後、店主は変装を解いた。

 

以上が、今回のストーリーです。

今回は貝殻盗難に絡む思惑に工藤が振り回される、スリリングな展開でした。ただ、「怪盗黒猫」こと犀が出て来るシーンでは、一種幻想的な雰囲気も漂います。

今回は珍しく(?)金に目が眩む工藤でしたが、最初の取引現場では蘭子を身体を張って守る気概を見せ、またその蘭子が真犯人だと判った時には静かな怒りをぶつけます。依頼人への筋は通し、悪は許さない工藤の姿勢がよく現れています。

 

探偵物語」の中でも異色な話ですが、雰囲気は損なわれておらず、逆に作品世界の広がりを感じさせます。では、今日はこれにて失敬。