ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #22 「ブルー殺人事件」

こんばんは、松田悠士郎です。

今回のテキストは、「探偵物語」第22話「ブルー殺人事件」です。脚本は田中陽造さん、監督は澤田幸弘さんです。「松田優作DVDマガジンVol.11」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。

 

工藤探偵事務所に、全身青ずくめの中年男が現れた。男は青井研二と名乗り、暴力団黒沢組の準幹部だと言う。青井は、妻が浮気をしているから相手の名前と住所を調べてくれと工藤に依頼する。その青井、3年前に暴力団東栄会の組員を刺殺して懲役7年半の実刑判決を受けて服役中だが、大量吐血をした為に入院・加療の為出所したらしい。工藤が癌だと見立てると、青井は認めた。

妻のユキは、「レディーファースト」という店で働いていて、張り込んでいれば必ず男が現れると断言して、青井は事務所を出て行った。

青井に貰った写真を持って、工藤は「レディーファースト」へ行ってユキを見つける。だが、店のバーテンはユキは身持ちが堅く、浮気など考えられないと話す。

工藤は仕事を終えて店を出たユキを尾行する。すると、ユキは公園で男と会っていた。その現場を工藤が写真に収めると、男に気づかれる。男は「玉島か?」と口走ってから工藤を追う。逃げおおせた工藤が青井に写真を見せると、青井は激怒する。何と、その男は警視庁捜査4課の浜田刑事で、青井を逮捕した張本人だった。

青井が立ち去った後、その浜田が現れて工藤を連行、剣道場で制裁を加えながらネガを出せと要求する。

翌日、青井が事務所に電話をかけて来た。青井はユキを問い詰めて、浮気相手が東栄会の玉島だと聞き出したらしい。これから玉島を殺しに行くと告げて、青井は電話を切った。

工藤は警察を騙って東栄会の事務所で玉島の居所を聞き出す。組員によれば、先に来た青井にも場所を教えたらしい。

工藤が、教えられたストリップ劇場でダンサーに付き合わされていると、裏から青井が現れて、ステージ上で死んだ。腹にはナイフが突き刺さっていた。

工藤は現場検証に来た服部&松本コンビに玉島の事を告げる。

その後、工藤が事務所で食事を摂っている所に服部&松本コンビが現れ、玉島には事件当時に浜田と会っていたというアリバイがあったと告げる。更に、東栄会のチンピラが実行犯として出頭、玉島は女子大生を口説くのに必死だと言い、散々に工藤を罵って出て行った。

工藤はユキに接触するが、ユキは玉島の事は知らないと言う。工藤が青井との電話の録音テープがあるとハッタリをかますと、ユキは玉島が店に来ていたと言い、東栄会の人間である玉島の名前を出せば青井も手が出せないと思ったと話す。そのユキは、店は青井にやらされていたので既に辞めて、今はスーパーでレジ打ちをしていると言って立ち去った。

次に工藤は、玉島の住むマンションの部屋に侵入し、ベランダで血の着いたシャツを発見する。だがそこに玉島が帰宅し、拳銃を出してシャツをよこせと要求する。工藤は隙をついて脱出、玉島はベランダでシャツを燃やした。その様子を、離れた建物の屋上から工藤が見ていた。

車で外出した玉島を追って工藤は雑居ビルに入る。その中の喫茶店で、玉島は女子大生に会って紙袋を渡す。

工藤は女子大生に接触して玉島の正体を告げるが、女子大生は信じない。工藤が紙袋の中身を確認すると、菓子類等に混じってキャベツがひと玉入っていた。女子大生は、玉島とは東京での遊びで、故郷に帰れば婚約者がいると自慢げに話した。

ユキが勤めるスーパーに浜田が現れる。工藤が浜田を尾行するがあっさりバレる。仕方なく工藤は浜田をユキとの現場を写したネガで釣ってバーへ誘う。そこでハッタリを混じえつつ、工藤は浜田に己の推理を披露する。浜田の目の前で工藤はネガを燃やすが、浜田は不服そうな顔でその場を立ち去る。

店を出た浜田は何処かに電話をかけた。尚も尾行する工藤に、銃弾が襲いかかる。辛うじてかわした工藤が隠れながら様子を窺うと、拳銃を持った玉島が出て来た。すると、工藤の背後から浜田が現れ、工藤に拳銃を突きつけてその場に伏せさせる。浜田は持っていた紙袋を使って玉島を誘い出し、射殺する。玉島は今際の際に「くそう、仕組みやがったな」と呟く。

現場に来た服部&松本コンビに、浜田は工藤を自分の正当防衛を証言する参考人だと告げる。

翌日、玉島宅の捜索に当たった浜田は、頻りにネガを探していた。その様子を観察していた工藤は、夜になって再び玉島宅に侵入した。すると、例の女子大生=マリが玉島宅に電話をかけて来た。工藤に玉島の死を告げられたマリは大いに困った様子だった。

工藤はマリが住む大学の寮に行き、そこでマリが玉島から預かったというキャベツを貰う。

事務所で工藤がキャベツを向くと、中からネガが出て来た。現像すると、浜田とユキの逢瀬の現場が写っていた。

工藤は現像した写真をユキに見せ、浜田にネガを100万円で買い取る様に伝えさせる。公園で待つ工藤にユキが、浜田が会いたがっていると告げる。

ユキの車で港へ来た工藤、浜田が待っているという桟橋へ向かうと、浜田がネガを要求する。工藤が、浜田は玉島に強請られていて、更に青井の出所で面倒な事になった為に、ユキに浮気相手は玉島だと嘘を吐かせ、青井に玉島を殺させようとしたが逆に青井が殺されたので仕方なく玉島のアリバイ証言をしたと推理を披露すると、浜田は自分の拳銃を工藤に握らせてから、正当防衛に見せかけて工藤を殺そうとする。機転を利かせて逃げた工藤を追う浜田は、その場に来たユキを謝って射殺してしまう。工藤が立ち去った後、浜田は自分のこめかみを撃った。

 

以上が、今回のストーリーです。

前半は病気を抱えた青井に振り回され、後半は浜田につけ狙われる、スリリングな話です。

今回はもっぱら、浜田に対して工藤の怒りが向けられます。ユキとの関係を知った玉島と、工藤を雇ってまで妻の浮気相手を突き止めようとした青井を一石二鳥とばかりに始末しようとした身勝手さを、工藤は許せなかったのでしょう。

だがその一方で、浜田とユキの逢瀬を写したネガを、浜田が知らない所で燃やしてしまってのは、恐らくユキへの屈折した優しさなのでしょう。相手の弱みにつけ込む様な真似はしないという、工藤の信条もよく表れていると思います。

コミカルな要素は薄めですが、楽しめる一作です。では、今日はこれにて失敬。