ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #23 「夕陽に赤い血を!」

こんばんは、松田悠士郎です。

今回のテキストは、「探偵物語」第23話「夕陽に赤い血を!」です。脚本は那須眞知子さん、監督は澤田幸弘さんです。「松田優作DVDマガジンVol.11」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。また、参考文献として、「松田優作と七人の作家たち」(李建志著)を参照しました。

 

工藤は、ピアノバーでの乱闘騒ぎをキッカケに宮崎という男と知り合う。

後日、夕子という女性と共に車に乗る宮崎と再会した工藤は、「マーニー」という店で飲む。そこで、夕子は山下という金持ちの男に見初められる。宮崎はピアノを弾きながら、その様子を苦々しげに見つめた。

その後、事務所に服部から電話がかかり、宮崎が「マーニー」で喧嘩をして相手の腕を折ったと聞かされ、宮崎の身元引受人になれと言って来た。工藤は仕方なく東署を訪れて宮崎を引き取る。

工藤との食事の席で、宮崎は夕子とのツーショット写真を見せる。ふたりはかつてピアノの指導者と生徒という関係から、恋人同士に発展していたのだ。

そこへ、「マーニー」のホステスが現れて、宮崎に退職金を手渡す。と同時に、ホステスは夕子が例の山下と結婚したと告げた。

翌日、事務所で寝ていた工藤は服部&松本コンビに叩き起こされて宮崎の居所を教えろと詰め寄られる。よくよく話を聞くと、宮崎が山下を車で轢き殺したらしい。だが、工藤が現場となった駐車場の職員に話を聞くと、轢いた現場は直接見ていなかった。ただ、外車が猛スピードで出て行ったのを見ただけだと言う。

工藤は「マーニー」でホステスに宮崎の行方を尋ねるが、ホステスも知らなかった。

工藤はイレズミ者に宮崎の情報収集を頼んで、宮崎の部屋へ行く。室内には、かつて宮崎がピアノコンクールで入賞した時の賞状が額装されてあった。

山下邸を訪れた工藤は、山下の3人の姉達に物珍しがられて色々質問されながらも、未亡人となった夕子に接触して、直接事件の事を訊いた。

夕子が山下と飲みに行った後、駐車場に車を取りに行くとそこに宮崎が現れて口論となった。その場に現れた山下を、宮崎が車ではねてそのまま走り去ったらしい。

出歯亀をする姉達を嫌って、夕子は工藤を伴って車で外出した。その車中で夕子はあの家も3人の姉も嫌いと言い切り、対面から来たトラックに突っ込もうとする。付き合い切れないと工藤が立ち去ろうとするのを引き止めて、夕子は海辺へと車を走らせる。そこで、宮崎との馴れ初めから別れまでを工藤に話した。

再び工藤を乗せて車を走らせた夕子は、筑波サーキットに入り込む。そこで、兄と称する勇次を紹介するが、ふたりは全然似ていない。不審がる工藤に、勇次は殺しなんてガキのする事だと粋がり、金目当てで妹を金持ちに嫁がせたと認めた。その様子を、服部&松本コンビが見つめていた。

山下邸前で夕子と別れた工藤に、服部&松本コンビが現れて脅しをかける。

工藤が事務所に戻ると、顔に青痣を作った夕子が来ていた。勇次に殴られたらしい。

夕子は宮崎を逃がして欲しいと、工藤に金を渡す。そこで夕子は、もう一度だけ宮崎に会いたいと漏らした。

工藤はイレズミ者と共に木賃宿を当たるが、行く先々で服部&松本コンビに遭遇する。三度び「マーニー」でホステスに話を聞くが、手掛かりは得られない。ただ、ホステスが言うには、宮崎は2日もピアノを弾かないと腕がムズムズすると言っていて、昔はピアノの練習の為に学校の音楽室に忍び込んでいたらしい。

宮崎の部屋で見た賞状に記載された「漆山小学校」を調べて向かった工藤は、音楽室で作曲をする宮崎を見つける。高飛びすると言う宮崎に、工藤は夕子から預かった金を渡し、夕子が会いたがっていると言い残して立ち去る。

作曲を終えた宮崎の前に、夕子が現れる。宮崎は金と共に書き上げたばかりの楽譜を渡して立ち去る。だが勇次の襲撃を受けて気を失う。宮崎を車に押し込めて殺そうとする勇次を、夕子が制止する。そこへ、勇次の後をつけた工藤が駆けつける。気づいた宮崎の目の前で、夕子は工藤に事件の真相を話す。勇次と夕子には血の繋がりは無く、ふたりして年寄り相手の美人局をやっていた。事件の時は、駐車場に現れた宮崎を振り切って車で逃げようとした夕子が、誤って山下を轢いてしまった。そこで宮崎が身代わりになって、車で逃走したのだった。

拳銃を出した勇次と宮崎が揉み合いになり、どさくさに紛れて夕子が拳銃を奪い、宮崎につきつける。だが宮崎は夕子の手から拳銃を取り、工藤達を威嚇して夕子の車で走り去った。宮崎は車内で自分の頭を拳銃で撃ち、車は谷底へ転落した。その現場を見届けた工藤は、後から来た勇次を一発殴ってその場を離れた。

 

以上が、今回のストーリーです。

全体的に暗めで、ハートボイルドらしさの少ない作品です。

今回の工藤の優しさは、ひょんな事から知り合った宮崎に向けられます。服部から半ば押しつけられたとはいえ、喧嘩で捕まった宮崎の身元引受人になり、行方をくらました宮崎を、誰に頼まれた訳でもないのに探し回ります。

一方で、工藤の怒りは兄妹を騙って美人局をしていた勇次と夕子に向けられます。宮崎に会いたいと言いながら、夫殺しの罪を宮崎に被せたままの夕子や、殺しはガキのやる事と言いつつも宮崎を殺そうとする勇次の身勝手さが、許せなかったのでしょう。

 

笑いの少ない、硬質な作品ですが、この多様性も「探偵物語」の魅力のひとつだと思います。では、今日はこれにて失敬。