ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

ハーフボイルドはハートボイルドの夢を見るか? #12「復讐のV/怨念獣」

こんばんは、松田悠士郎です。

今回は、「仮面ライダーW」第12話「復讐のV/怨念獣」を考察します。

 

前話の終わりに姿を現したバイラス・ドーパントは、黒須を襲い、ルナメタルの攻撃をかわして消える。変身を解く翔太郎にフィリップが「動きが鈍かった」と尋ねると、翔太郎は答えた。

「俺には、あのドーパントが泣いてる気がするんだ」

 

風邪を押して事務所に来た亜樹子を交えて、翔太郎達は今回の事件を発端からおさらいした。

キッカケは、一週間前に起きた轢き逃げ。この被害者の山村幸は未だ昏睡状態、幸を轢いた4人は次々と怪物車に襲われて、幸と同じ病院に入院している者も居る。

怪物車を運転していた幸の弟・康平以外に復讐の動機がありそうなのは、幸の婚約者の湯島則之のみ。

 

湯島が女性に美術を教えるアトリエを訪れた翔太郎が、中から響く悲鳴を聞いて飛び込むと、バイラス・ドーパントが湯島を襲っていた。翔太郎とフィリップは戸惑いつつもサイクロンジョーカーに変身して湯島を助けるが、バイラスは取り逃がし、湯島も姿を消してしまう。

 

園咲邸では、霧彦が冴子を探していた。そこへ若菜が現れ、冴子が琉兵衛と共にオペラ鑑賞へ行ったと告げる。小馬鹿にした様な態度の若菜に、霧彦は「ガイアメモリの恐るべき可能性」をチラつかせる。

 

翔太郎がウォッチャマンから得た情報によれば、山村姉弟の両親はふたりが小学生の時に死亡、ふたりを世話した親戚も居ないらしい。つまり、この時点で容疑者が見当たらないのだ。だがここで、フィリップが呟く。

「その可能性を見落としていた」

フィリップは亜樹子と共に幸の病室を訪れる。フィリップが睨んだ通り、幸の腕にガイアメモリのコネクタがあった。しかも、メモリは体内に入った状態だ。

霧彦によれば、強烈な感情が人間の精神そのものをドーパントにした結果が現在のバイラスなのだ。冴子が理由を訊くと、霧彦は根津から聞いた話として、幸は事故の直前にメモリを使用したらしい。その時に幸の精神エネルギーと同化したバイラス・ドーパントは幸の肉体から抜け出して、康平の怒りや悲しみを吸収して復讐を始めたのだ。

この事例を更に研究すれぱ夫婦の強力な武器になると息巻く霧彦だが、冴子はイマイチ乗っていない様子だった。

 

泣いていたのは、幸の心だと気づいた翔太郎は湯島を探しに、フィリップは幸の精神を地球(ほし)の本棚に呼び出して説得を試みた。

本棚に現れた幸に、フィリップは湯島を殺そうとした動機を尋ねる。

 

その湯島を、クイーンは「女性を絵のモデルに誘って食い物にする女ったらし」と断じた。同席したエリザベスも同調する。そこに現れたサンタちゃんがブチ撒けたプレゼントは、風邪予防グッズの山だった。

クイーンが更に、湯島は最近結婚詐欺もやっていたと翔太郎に告げる。

幸は本棚で、愛していた湯島が他の女性を口説いている姿を目撃し、その場で根津からバイラスメモリを買ったと告白する。しかし、その後一旦はメモリを使う事を止めようとも思ったが、そんな時に黒須達に轢き逃げされた事で復讐を誓ったと言う。まずは轢き逃げ犯に復讐し、次は自分を騙した湯島だと、幸は怨念の籠もった目でフィリップに告げた。

 

その湯島は、口説いている所を幸に見られた女性のマンションに行き、暫く泊めてもらおうと頼んでいた。そこへバイラス・ドーパントが現れる。湯島は女性を見捨てて逃走、そこへ翔太郎が駆けつけるが、またしてもバイラスを逃がしてしまう。

湯島はマンションの地下に逃げるが、そこにバイラスが襲いかかる。だがスタッグフォンが襲撃を阻止、翔太郎が現れる。逃げ惑う湯島に「幸さんに謝れ」と迫る翔太郎だが、湯島は「俺には関係ない!」と尚も逃走する。翔太郎は身体を張ってバイラスを止める。

これ以上誰も殺させたくないという翔太郎の思いを告げて説得するフィリップだが、幸は「もう私には止められない」と、怨念のエネルギーを解放してフィリップを本棚から現実世界へ弾き飛ばす。暴走する幸を止める為に、ふたりは変身する。

 

一方、冴子は霧彦に「あなたの名誉は回復できないわ」と冷淡に告げる。冴子によれば、バイラスは通常通りに使えば街ひとつを滅ぼせる程の力があるが、現在の状態では人ひとりに影響を及ぼすのがやっと、明らかに能力が劣化しているのだった。

 

逃げた湯島は、以前に幸と訪れた教会に辿り着いた。すると、教会の中から幸=バイラス・ドーパントが現れて湯島に襲いかかる。そこにWが割って入り、戦闘になる。何とかして幸を止めたい翔太郎だったが、今の状態では難しいと悟り、仕方なくヒートトリガーに姿を変えて、トリガーエクスプロージョンでバイラスを消滅させた。病室では、幸の腕からメモリが飛び出して破壊された。メモリブレイクだ。

バイラスが消失して「ざまぁみろ!」と粋がる湯島を、翔太郎が思い切り殴った。

「お前を殴ったのは俺の拳じゃない、幸さんの心だ」

 

以上が、今回のストーリーです。

今回翔太郎は、強い怨念でドーパントを生み出した幸を、何とかして救おうと試みます。それでも最後はメモリブレイクせざるを得ませんでしたが、その代わりに幸の怨念の源となった湯島に、幸に代わって怒りの鉄拳を振るいました。ハーフボイルドの中に、ハートボイルドが垣間見える瞬間ではないでしょうか。そんな翔太郎を支援するフィリップも、ハートボイルドに近い心情だったのではないかと思います。では、今日はこれにて失敬。