ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

ハーフボイルドはハートボイルドの夢を見るか? #33「Yの悲劇/きのうを探す女」

大変ご無沙汰です。松田悠士郎です。

約半年ぶりに更新するこの企画を今一度軽く説明しますと、所謂「平成仮面ライダーシリーズ」の中の一作にして、「探偵」を主人公に据えた第11作「仮面ライダーW」を、私が尊敬してやまない不世出の俳優、松田優作さんがその主演ドラマ「探偵物語」で提示したテーマ「ハートボイルド」(とてもハートウォーミングで、少しだけハードボイルド)という観点から考察する、というものであります。

 

今回は「仮面ライダーW」第33話「Yの悲劇/きのうを探す女」を取り上げます。

 

「鳴海探偵事務所」に現れたひとりの女性。不破夕子と名乗る彼女は「きのうを探して欲しい」と依頼して翔太郎達を困惑させる。程なく、「きのう」が猫の名前だと判明し、翔太郎はえらく格好つけて依頼を引き受ける。普段は嫌うペット探しの依頼を翔太郎が引き受けた事に戸惑う亜樹子だが、フィリップは見抜いていた。お気に入りの帽子を選んで被った翔太郎は、夕子がタイプの女性らしい事を。

 

一方、照井達は「西山不動産」の社長の元を訪れていた。社長の部下ふたりが相次いで謎の事故に遭遇している事に関して話を聞きに来たのだ。だが時計の針が午後3時を指した途端、突然社長が服を脱いで大声を張り上げてビルの屋上からダイブしたのだ。間一髪、照井が社長の落下を阻止した。社長の身体には、「8」の字の痣があった。事故に遭ったふたりにも、同様の痣が見つかっていた。

 

翔太郎と亜樹子、夕子は猫を求めて風都ホール付近まで来ていた。ホールでは近々、園咲冴子の講演会が開かれる予定である。その講演会のポスターに描かれた「ふうとくん」を見て、翔太郎はかつて戦った霧彦を思い出していた。

「奥の手」猫の物真似を繰り出して猫を探す翔太郎と、呆れて見つめる亜樹子の耳に午後4時の鐘が聞こえた時、ビルの屋上にドーパントが姿を現した。

 

園咲邸で歓談している冴子と井坂の所へ血相を変えて若菜が飛び込んで来た。冴子に、講演会の中止を求める脅迫状が届いたらしい。だが冴子は意に介さず、講演会は予定通り開くと豪語し、井坂も泰然自若としていた。

 

屋上でドーパントと対峙した翔太郎は、飛び降りたドーパントを追いつつサイクロンジョーカーへ変身、相手の射撃攻撃に対してヒートメタルに転換、休館日のホール内でドーパントと戦う。途中でドーパントの一撃を食らうものの、全くダメージを感じなかった為に攻撃を続けて再びサイクロンジョーカーに転換、追い詰めるが姿を消されてしまう。

その後、無事に猫を見つけたらしい夕子が翔太郎達に別れを告げた。

「全部上手く行きました。これで明日が楽しみです」

 

翌日、冴子は講演会へと赴く。一方で探偵事務所には照井が訪れ、自分の世界に浸る翔太郎を無視してフィリップに協力を要請していた。西山不動産の社長以下3人はいずれも現在は昏睡状態、3人は風都南地区の地上げに深く関わっていたらしい。

 

講演会が始まり、冴子が壇上で話し始めた。その外に現れた夕子、「始めましょうか、左翔太郎君」と独りごちるなりメモリを取り出して起動した。

「イエスタデイ」

夕子こそ、昨日現れたドーパントの正体だった。

午後3時になった瞬間、翔太郎の身体に「8」の字の痣が浮かび、直後に謎の行動を始めた。照井や亜樹子の言葉を無視して勝手に喋って出て行った翔太郎の動きを見て、フィリップは気づいた。翔太郎は昨日の午後3時の行動をそのままトレースしているのだと。フィリップは瞬時に地球の本棚で検索を始め、イエスタデイメモリを突き止める。そこから再検索し、イエスタデイ・ドーパントから受けた痣=刻印が発動すると24時間前の記憶の通りに行動してしまう事も知る。つまり西山不動産の3人も、24時間前の記憶に従って行動して事故に遭ったのだ。フィリップは、翔太郎を追いかけた亜樹子にその事を伝えるが、亜樹子には翔太郎を止められない。その内に翔太郎は昨日の通りに屋上に上がり、Wに変身しながら飛び降りる。だがフィリップがメモリを装填していない為に変身はできない。亜樹子な懇願で仕方なくフィリップがメモリを装填し、無事に変身する。だが昨日の行動をトレースする翔太郎を、フィリップも止められない。やがた翔太郎は講演会真っ只中のホールに突入、観客を蹴散らす。Wの登場に戸惑いながらも、冴子は逃げずに壇上に留まる。翔太郎は昨日の記憶のままに壇上の冴子に向かって飛ぶ。だが寸での所でアクセルがWを止めた。そのままフィリップの提案に乗ってアクセルがWを外へ追い出すと、フィリップがエクストリームメモリを呼んで強制的にサイクロンジョーカーエクストリームに転換、翔太郎を正気に戻した。

そこへ現れたイエスタデイ・ドーパントにフィリップが告げる。

「君の正体は判っている。須藤霧彦の妹、須藤雪絵だ!」

夕子=雪絵は認める代わりに、かつて霧彦が身につけていたスカーフを取り出した。そして雪絵は、自分はミュージアムの幹部になると告げて再びイエスタデイ・ドーパントに変身して攻撃する。翔太郎は迷いながらも、プリズムビッカーをイエスタデイ・ドーパントへ振り下ろす――?

 

以上が今回のストーリーです。

今回は翔太郎が依頼人として現れた夕子(=須藤雪絵)に好意を抱いてしまう事が、後の行動に影響してしまいます。

自分を利用して冴子を亡きものにしようとしたドーパントの正体が夕子だと知り、更に夕子が霧彦の妹だと聞かされた翔太郎は、彼女への攻撃を躊躇います。自分の身が危険な状態なのに相手に感情移入してしまう、「ハーフボイルド」を今回も発動しています。果たして翔太郎は、雪絵を倒せるのか?

ではまた次回。