ハートボイルドマスターへの道

小説で標榜している「ハートボイルド」という概念について深く探究する為のブログ。

「探偵物語」でハートボイルドを学ぶ #4 「暴力組織」

こんばんは、松田悠士郎です。

 

本日のテキストは、「探偵物語」第4話「暴力組織」です。脚本は前回に引き続き佐治乾さん、監督もやはり引き続いて西村潔さんです。今回も「松田優作DVDマガジンVol.02」収録の映像を視聴し、「甦れ! 探偵物語」を副読本としています。

 

仲間と酒盛りをしていて酔い潰れた工藤が、気がつくと勇次という男の車に乗せられていた。千葉行きのフェリーの駐車場に居る事に動揺しつつ、工藤は勇次の車のトランクに積まれた2億円もの現金を目の当たりにする。

その後、工藤が船酔いで苦しんでいる間に勇次は何者かに殺害され、工藤は犯人に仕立て上げられてしまう。

工藤は金を盗んだと思われる宮本を探す為、宮本の妻で勇次の姉の芙美子の所を訪れて写真を入手、密かに東京に戻った工藤だが、かつて宮本が所属したシンジケートに捕まってしまう。

拷問を受けた工藤は、ボスの歌川の意向によって24時間の猶予を貰い、宮本を探す事になる。服部&松本コンビの追及をかわし、街の仲間の協力を得て捜索を続ける。

24時間の猶予がなくなった頃、工藤は拳銃を手に入れて歌川の元へ戻り、拳銃を使って歌川達を宮本の殺害現場へ連れて行く。そして、事件の真相が暴かれる。これが、今回のストーリーです。

 

今回も、前回同様にどちらかと言うとハードボイルド寄りな内容です。全体的に笑いの要素は少なめです。

そんな中でハートボイルドを感じさせるポイントは、やはり工藤が見せる優しさです。

宮本の妻の芙美子に対しては、「いい機会だから、別れてしまいなさいよ」とぶっきらぼうながらも芙美子の身を案じて勧め、組織の連中に痛めつけられた街の仲間を労り、最後に組織の幹部に街の仲間の事を自分の宝だと言って善処を求めています。この様に優しさをキチンと示せる所が工藤の温かさだと思います。

今回は動く動機が動機だけに、工藤の義憤は見られませんが、真犯人である歌川精一に対しては、抑えた怒りをたたえた厳しい対応を見せています。

 

余談ですが、この話で工藤が船が大の苦手だと判明します。フェリーの中で目を覚まして、自分が船内に居ると知った時の狼狽えっぷりは、数少ない笑いのひとつです。

それと、中盤で工藤に拳銃を渡すのが、骨董屋の飯塚です。飯塚は工藤が来ると映画の話をするのが定番です。この話ではルキノ・ヴィスコンティ監督について飯塚が熱く語っています。

 

今回は、自分の身の危険よりも街の仲間の事を案ずる工藤の姿勢が現れた話だと言えるでしょう。では今日はこれにて失敬。